NHK 知るを楽しむ この人この世界  教育テレビ 2006年2-3月     脳を鍛える 東北大学教授 川島隆太

第七回 脳と生活環境

脳は寝ている問に「復習」している

 私たちの体には、ホルモンの分泌、行動量、基礎代謝などのすべてにおいて、二四時問の日内リズムがあります。脳の働きにもそのリズムがあり、午前中にいちばんよく働くことがわかっています。それが午後になるにつれて低下し、夜にさらに低下する。寝ている間は最低の状態にあり、また朝起きてからグッと上がってくる、ということを繰り返しています。ですから、脳を効率的に使おうと思えば午前中がいちばん効率がよいと言えます。
 皆さんの中には、「夜型」を自称する人もいるでしょうが、本当に夜、効率よく仕事ができるか、実験してみてはいかがでしょうか。例えば朝と夜に単純な、○○問の計算問題を解いて時間を測り、どのくらい速さが違うか比べてみてください。きっと、多くの人は朝の方が驚くほど速く解けているはずです。人によっては一・五倍から二倍時間がかかるほどで、脳の情報処理能力は夜になるとそれほど落ち込むのです。
 もう一つ、脳の働きにとって大切なのは睡眠です。睡眠にはリズムがあり、夜、深い眠りが最初におとずれ、だんだん浅くなり、それから深くなったり浅くなったりを何度か繰り返します。眠りが深いときをノンレム睡眠といい、大脳はすべて寝ていて、体の筋肉は少し緊張度がある状態だと考えられています。一方、眠りが浅いときをレム睡眠といいます。レムとは、ラピッド・アイ・ムーブメント(Rapid Eye Movement)の略で、その名のとおり、目がキョロキョロ動く現象が起こっています。実際、寝ている人の顔を見ると、瞼の上から目がキョロキョロ動いているのがわかります。このとき、脳は少し起きかげんだけれど、体はいろいろな緊張が解け、筋肉が非常にリラックスした状態になっています。ちなみに、私たちが夢を見るのはこのレム睡眠のときで、脳が起きているためにさまざまな知覚が生じるのです。ただし、最近の研究で、前頭前野はこのレム睡眠のときも寝ている状態にあることがわかってきました。夢が支離滅裂なのは、論理思考を扱う前頭前野が機能していないからだと考えられます。
学習と睡眠の関係についても興味深いことがわかりました。脳は、眠っている間にその日にあったことを復習しているらしいのです。ですから、睡眠時間の短い人は、昼、長く起きていろいろな作業をしていても、翌日に学習内容が残りづらい。一方、きちんと睡眠をとっている人のほうが学習内容を忘れづらく、翌日も残っているのです。昔は、大学に受かるためには「四当五落」−一日四時間しか眠らなければ受かるけれど、五時問眠ったら落ちてしまうと言われました。しかし、そんな常識は脳科学で覆されたのです。睡眠時間の短い人はいくら努力をしてもその努力が実らない。一方、きちんと眠っている人は努力した分、脳の中に実となってついてくる。むしろ、「四落五当」なわけです。
 睡眠のリズムは、われわれの体にとっても非常に重要です。通常、人間は夜寝て昼活動します。しかし、職業や趣味によって普段からそれが逆転した生活を送ったり、普段は日内リズムにかなった生活をしていても土曜や日曜は昼とか夕方まで眠ったりしている人はたくさんいるでしょう。こうした睡眠のリズムの乱れにより、免疫機能が低下するというデータが出てきています。それが高じていくと脳はひきこもりのようになり、何もする気が起きない状態にまでなることもわかってきました。実際、ひきこもりの子どもたちの中にも、そうした日内リズムの乱れが原因のケースが意外に多いのです。ですから、日内リズムを大切にして夜きちんと睡眠をとることが、脳の健康、心の健康のためにとても大事だと言えます。

朝食を食べなければ、脳にガソリンが供給されない

 食と脳の関係についても、最近いろいろなことがわかり始めてきています。私たちの脳細胞のエネルギー源は、ぶどう糖と酸素だけしかありません。蛋白質、アミノ酸や脂質などをいくらとっても脳の栄養にはならないのです。ですから、脳細胞を働かせるためにはぶどう糖に変換される食べ物を食べ、脳に供給することが大切です。具体的には、デンプンが最も長時間効率的に糖を供給できます。特に消化の遅い米は、血糖値すなわち血液の中の糖の値を長時間保つのに有効ですから、脳をきちんと使うには、何よりもまず、ご飯を食べなければいけません。
 そう考えると、今の子どもたちの状況は非常に危機的だと思われます。全国的に幼稚園や小学校における朝食の欠食率が二、三割に達しているとの報告もあります。学校の先生に聞くと、朝食を食べてこない子どもは顔を見ただけでわかるそうです。目がドロンとして集中力がまったくない。授業も聞いているか聞いていないかわからないような状態になってしまうと言います。実際、朝食を抜いている子どもの成績が悪いというデータも出ています。朝食を抜くということは、前日の夕食以降、脳のガソリンであるぶどう糖を供給しないまま学校に来ているわけです。そんなガス欠状態では、学校で何かを学ぼうとしても脳が働きませんから、成績が悪いのもうなずける話です。
 これは子どもだけの問題ではありません。社会人の中にも朝食を抜いて会社に行く人はたくさんいます。そんな人が午前中にきちんと会社で働けているとは私には思えません。会社に対する背任行為とも」言えるのではないでしょうか。勉強でも仕事でも、何かをしようと思ったら確実にご飯を食べる必要がある。特に脳の活動量が最も高い午前中から日中にかけては常にぶどう糖を供給する必要がありますから、朝食、昼食は決して抜いてはいけません。そんな事実が脳科学から見えてきました。
 脳を使って新しいものを学ぶとき、私たちの脳の中では脳細胞が働くだけではなく、その結果、脳細胞どうしのつながりが強化されるという変化が起こります。脳には神経細胞と神経細胞をつないでいる神経線維という電線があり、神経細胞が興奮したときに発する電気がその中を通ります。神経線維が神経細胞と接している場所をシナプスといい、そのシナプスを通じて隣の神経細胞に化学物質がふりまかれることによって、その神経細胞が自分も電気を出すか黙るかということを決めるという仕組みになっています。
 学習をするときには、ある神経細胞からその学習に必要なターゲットとなる神経細胞まで、どんどん電気が繰り返し流されます。そして、電気が繰り返し流される結果、脳の中にダイナミックな変化が起こることがわかりました。神経細胞と神経線維をつなぐシナプスの数が増え、神経線維が太くなるのです。さらに神経線維の数も増え、脳の中を情報が通りやすくなります。つまり、脳の中に新たにネットワークが作られるのです。
 そして、シナプスや神経線維をどんどん増やし、太くするためにはぶどう糖だけでは足りません。ビタミンもアミノ酸も脂質も、その他さまざまな栄養素が必要になってきます。ですから、脳を働かせるにはぶどう糖をとることが特に必要なのですが、さらに脳を発達させ、強化していくにはバランスのいい食事が欠かせないのです。
 ある種のサプリメントをとると脳の働きがよくなるという情報が世の中にたくさん流れていますが、私は今のところ要注意だと考えています。サプリメントが脳機能にいい影響を与えると判断する根拠が薄弱だからです。例えば、ある種の魚からとれる抽出液が脳の働きをよくするという説がありますが、その根拠となっている実験は、今のところ私の知るかぎりではそれほどありません。ネズミのような実験動物に大量のサプリメントを投与し続けたことにより、そのネズミたちの迷路学習の能力が上がったというデータが一つ。そうした栄養素を体内で合成できない疾患をもった人の認知機能が低いというデータがあるぐらいです。そこからわかるのは、動物にものすごく大量のものを食べさせれば多少よくなるということ、また、まったく体内に存在しない状態では、うまく脳が働かないということです。以上のことから、健康な人間がサプリメントによってその栄養素の摂取量を増やせば頭がよくなるという結論を導き出すのは少し早すぎる気がします。ですから、今のところ、こうした情報には注意を払う必要があるでしょう。そのような特別なサプリメントに頼るよりも、パランスよく食事をすることをお勧めします。
 ここから先は栄養学の世界に入りますが、バランスよく食べるには、ある特別な食事に偏らず、さまざまなものを食べることが効果的と考えられます。具体的には一週間に三〇品目の食品をとることを目指してはいかがでしょうか。米、豚肉、ニンジン、シイタケといった食材単位で数えます。ただし、調味料は除きます。毎週、どんな食品を食べたかをチェックし、三〇品目に足りなければそうなる努力をする。実際にやってみると、なかなか難しいことに気づくでしょう。例えばお肉や魚で品目数を増やすのはかなり大変です。肉は豚肉、牛肉、鶏肉の三種類がほとんどですし、季節の魚といっても四、五種類ですから、頑張っても一〇品目しかいきません。残りの二〇品目を何でとるか。主食は多くの人が米かパンでしょうから、米と小麦の二種類しか追加できません。結局、野菜や豆類などの数を増やさないと三〇という数字はなかなか達成できないのです。ですから、三〇品目を心がけていけば自然と、バランスのいい食事をすることができると考えられます。

お酒を飲むと脳の働きが活性化する?

 お酒と脳の関係でも、興味深いデータが得られました。
このデータは日本大学医学部・同大学院総合科学研究科との共同研究で得られました。お酒は脳に明らかにいろいろな影響を及ぼします。まず、特に前頭前野の抑制系の機能が落ちます。だから、お酒を飲むとハッピーになるのです。最初は感情の抑制等がきかなくなり、次いで思考力の低下などが起きます。酒量が増えれば、大脳の働き全体がだんだん落ち、さらにアルコール濃度が高くなっていくと脳全体の働きが止まります。その結果、急性アルコール中毒で死亡する事故にもつながるのです。
 お酒を飲むと脳の働きがどう変わるか、私たちは心理実験及び脳機能イメージングで行なったことがあります。実験では、血中のアルコール濃度を測り、ほろ酔いのときの脳の状態を測定しました。その結果、まずおもしろいことに、全く飲まないしらふのときより、ほろ酔いのときのほうが課題を出したときの正解率がやや高く、反応時間が短くなるという結果が出ました。これは二通りに解釈できます。まず、お酒を飲んだことによって脳の働きがスムーズになり、速く正確に解けたという解釈が一つ。あるいは、課題が単純なものだったので、お酒を飲んでいいかげんに解いても間違えず、かえって時間も早かったという解釈が一つ。
 実際に脳測定をしてみた結果も、しらふのときよりほろ酔いのときのほうがより脳が働いているという結果が出ました。これも二通りに解釈できます。お酒を飲むことが脳の働きを活発にしたという解釈が一つ。あるいは、しらふならそれほど頭を働かせずに解ける問題を、ほろ酔いのときには脳をたくさん働かせなければ解けないという解釈が一つ。どちらが真実かを語ろうとは私は思いません。お酒が好きか嫌いかで、好きなほうの解釈をとってください。
 ただし、明らかにお酒好きな人を擁護しきれないデータも出てきています。ほろ酔いを通りすぎるほど酒量が進むとテスト自体ができなくなる−つまり、脳がまるっきり働かなくなることがわかっています。そして、お酒が好きな人はほろ酔いで止めることが往々にしてできません。もしも毎日ビール一杯程度で止められるのであれば酒は百薬の長かもしれませんが、そんな自信のない人は、お酒を飲めば脳がよく働くなどと思っていろいろなことに手を出してはいけないと、これは脳科学、の立場から厳しく忠告しておくことにしましょう。

癒されているとき、前頭前野は休んでいる

 お酒を飲んで脳が働くようになるかはともかく、酔っ払うと気持ちよく、ストレスから逃れて癒されている気持ちになります。多くの人はそれが目的でお酒を飲むのかもしれません。この「癒されている」という感覚に、脳科学の立場から触れていきましよう。
 癒されているときに脳はどう働いているか、いくつかの実験で調べたことがあります。まず、癒される映像や音楽を視聴しているときの脳活動を測りました。使用したのは、写真家のテラウチマサト氏が作成した、屋久島の自然の風景のスライドをゆったりした音楽に合わせて楽しむプログラムです。まず、これを視聴しているときに脳のどこが働くかを調べたところ、ものを見る後頭葉と音を聞く側頭葉だけが働くというストレートな結果が出てきました。おもしろくもおかしくもないと思ったのですが、癒されるのは脳の働きが下がるほうだろうと考え直し、ではどこの脳の働きが下がっているかを調べました。その結果、右の脳を中心に、前頭前野の働きがグッと低下しているという事実を見つけだしました。これが癒しと脳の関係を見いだした最初の研究になります。
 そこで私たちは、特に前頭前野の働きが下がることが癒しの感覚と一致しているのではないかという仮説に基づき、次の実験を行ないました。マッサージをうけているときの前頭前野の働きを測定したのです。先ほどの映像と音楽の実験のデータはポジトロンCTを使いましたが、今度は近赤外計測を使いました。用意したマッサージは二種類。筋肉をもみほぐす強いマッサージと、気持ちをゆったりとさせる、呼吸を動悸させながらさするようなマッサージです。マッサージをうける被験者には、気持ちがよいという感覚が出たときにボタンを押して教えてくださいと伝えました。すると、マッサージの強さにかかわらず、気持ちよくなってくると同時に、それまで高かった前頭前野の血流がいっぺんに下がりだすことを発見しました。そこでちょっと意地悪をして、気持ちのよくなるマッサージをするときに力を入れてもらい、気持ちよいというより痛くなるような感覚をもたらすように仕向けてみました。すると、前頭前野の血流は途端に元に戻るというダイナミックな反応が起こりました。そこから私たちは、前頭前野の血流が下がっている状態と癒されている気持ちの間に強い相関があると確信したのです。
 そこで、私たちは前頭前野の血流がどうすれば下がるかをそのほかの環境で調べてみました。すると、テレビゲームをしているときに前頭前野の血流が下がることが多いとわかりました。ゲームをしている子どもたちは非常に興奮してやっているように見えますが、彼らの心はゲームをすることで癒されているのかもしれません。漫画を読んでいるとき、テレビ番組を見ているときも同様の反応が起きました。ゲーム、漫画、テレビは脳から見ても癒しの最適なアイテムなのではないかと私たちは考えています。
 研究を進める中で、私たちはある矛盾に気がつきました。漫画を読んでいる時は文字も読んでいます。私たちのこれまでの研究からは、文字を読めば脳は活性化するというデータが出ていました。それなのに、なぜ漫画の場合は不活性化が起こるのでしょうか。そこでいろいろと調べていくと、前頭前野のさらにおもしろい性質が見えてきました。前頭前野の活動は、絵や写真があるとどうも働きが下がりやすいのです。例えば写真雑誌などを読むときも、漫画のときと同様、前頭前野の働きが落ちています。また、音楽がかかると働きが下がりやすいこともわかりました(第4回コラム参照)。テレビ番組やゲームは、まさに絵や写真、音楽がふんだんに盛り込まれて構成されていますから、前頭前野の血流が下がりやすい要素がたくさん入っているわけです。そこで、ちょっといたずらの実験として、同じテレビゲームでも音楽を消したらどうなるのか調べてみたところ、それまで下がっていた前頭前野の反応の下がり方が少なくなるという、予想どおりのデータが出てきました。
 今の世の中の環境はとても複雑で、いろいろな情報がいろいろな形で飛び込んできます。脳はそれを受けて同時にいろいろな処理をしていますが、絵や音楽が情報として飛び込むと、脳がそちらに興味を示し、前頭前野の血流はグッと落ちていくのかもしれません。それは、たくさんの情報を処理している脳が癒されようとしているから起きることなのかもしれませんが、本質的な理由はわかっていません。

なぜ、脳を活性化させる必要があるのか

 第1回から第6回まで、私は脳をどうすれば活性化できるかに焦点をしぼって述べてきました。しかし、私たちの脳は使えば確かに機能は上がりますが、使うことだけが重要ではありません。例えば体は、常に動かし続けるのではなく、休ませることとペアになって初めていろいろな機能が向上していきます。これまでの私たちの脳研究では、機能を鍛えるという点では脳も体も原理原則は一緒だというデータしか出ていません。ですから、脳にとってもたくさん使うと同時にバランスよく休ませないといけないと考えられます。
 休むことの最たるものは睡眠です。さきほど、脳は寝ているときに起きたり休んだりするけれど、前頭前野は一晩中ゆっくりと休みをとるという話をしました。それでリフレッシュはするでしょうが、だからと言って生活の中で脳を使いっぱなしにすることはできません。そのことを実感するいいテストがあります。例えば新聞を広げ、何分続けて音読できるかストップウォッチで測ってみてください。第4回でも少し触れましたが、おそらく五分から一〇分でたいがいの人は疲れ、しゃべる気力がなくなります。これがまさしく脳がオーバーヒートしている状態で、使いすぎてもうだめだよというサインを出しているのです。しかし、少し休めばまた同じことが繰り返しできるようになっていきます。このことからも、脳を休ませることの重要性はわかっていただけるでしょう。
 現在のIT化社会では、私たちは以前ほど脳を使わなくても生きていけるようになりました。今まで脳を使わなくてはできなかったことを、コンピューターなどが肩代わりしてくれるからです。体も同じことです。文明が発達してきて、私たちは体を使わなくても遠くへ行ったり高いところに登ったりすることができるようになりました。だからこそ、運動の大切さが今、取り沙汰されているわけです。車もエスカレーターもエレベーターもない社会を人間が作っていたら、フィットネスをしなさいということはだれも言わないはずです。それと同じ環境が体だけでなく脳にも起きているのですから、脳も意識して使うことが重要なのではないかと私は考えるのです。
 私が主に脳の活性化に焦点をあてた活動や発言をしている背景は、そういう危機感があります。そんなことも頭に入れながら、普段の生活の中で、脳のバランスをとっていく感覚を忘れずにいていただきたいと思います。


集中できるものは一つだけ

 集中力は前頭前野から発揮されることがわかっています。しかし、脳全体は集中ということに関しては能力がきわめて低く、たいていの場合、一つのものにしか集中できません。この一つのものに集中する現象が、脳の中では自動的に起きます。これを心理学では「サーチライト仮説」と呼びます。
 サーチライトである場所に集中して光をあてると、そのまわりのところは逆に暗くなります。それと同じ現象が脳の中でも起きるのです。これは、私たちの脳機能イメージングの研究からわかったことです。何かに手でさわり、その形を読み取ることに意識を集中させると、脳の働きとしてはものに「さわる」頭頂葉を中心に活性化が起こります。これは当然ですが、それと同時にものを「見る」後頭葉の働きが下がるのです。手で形を読み取るために必要な「さわる」ところに光をあてて、いらないところ、特にいちばんじゃまになる「見る」ところは暗くする、まさしくサーチライトのような現象です。
 これは日常生活の中でも経験しています。例えば五〇〇円玉を手にとって、五〇〇という数字がどちらに書いてあるかを指でさわって読み取ってみてください。マージャンをする人ならば、牌に刻んである文字を指でさわって判断してみてもよいでしょう。すると一○○人のうち九九人は、目を閉じるか天井を向いて何もないところをぼーっと見るという反応をします。まさにこれは、目に見えるものが情報処理の邪魔になるために、脳がものを見る場所の血流を落とし、視覚の範囲内で何も情報がないところに自分の目をもっていこうとしているのです。ですから、集中しやすい環境をつくるためには、脳が命令する前に、あらかじめ、必要でない感覚を刺激するようなものは遠ざけてしまうのが賢明と、言えるかもしれません。

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